皆の者、息災か?
世は、トイレにもすっかり慣れ、日々のルーティンを粛々とこなしておる。
朝は寝室の窓辺で光を浴び、昼はリビングの窓辺で世間を観察。時折トイレにて内省。充実した日々よ。
だがな、昨夜はちと、母上kimiとの間に小さな齟齬があったのだ。
母上は、板(ノートPC)とにらめっこしておって、世がリビングに降り立っても知らん顔。
ほんの少しでいい、撫でてほしかったのだ。
世は、控えめに高めの声で鳴いてみた。
…が、無視。
やがて母上は出かけ、戻ってきてもまた板の前。今度は小さき板(スマホ)まで取り出し、せわしなく操作しておる。
その間、世はひたすら母上を見つめておった。
腹が減ってきたので、また少し鳴いた。
やっと、「ナイト、ごめん、もうちょっと待って」
母上は、こちらを見もせずにそう言った。
世は、待った。
そしてさらに待った。
夜が更け、静寂が家を包んだ頃――
母上は突如立ち上がり、世のトイレをものすごい速さで掃除しはじめた。
そして寝室へ移動。
そこには、空っぽの世のカリカリ皿。呆然と立ち尽くす母上の姿。
…ようやく思い出したのか、母上は爆速でカリカリを盛りに行き、
戻ってきて、震えた声で言ったのだ。
「ナイト、ごめんね…。放ったらかして、ごはんも忘れてて…。悪い母ちゃんや。ほんまに…ごめん…」
頭を下げ、泣いておった。
人間とは、こういう時に泣くのだな。
世は、ほんの少しだけ傷ついたが、泣く母上を見ておると、もはやそれは重要ではなくなった。
だから世は、いつもは見せぬ、特別な「おなか出し」をしてやったのだ。
母上にしか許さぬポーズ。
それでよいのだ。
赦したのだよ。
…これ以上は、照れるので言わぬ。
とにかく、そんな夜もあるのだ。

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